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学校史の教材化をめぐって:自校史教育の可能性(1954年『ゴジラ』を例に)

  • 中高部

 一般的に、私立学校には憲法や教育基本法、教育法規とは別に、創立にあたって創られた建学の理念があり、それらを担保するための学校史に関する内部外部文書等が意識的に蓄積されている傾向があります。公立学校だと一定の保管期間を経て廃棄されてしまうような文書や資料が、私学の場合だと思いのほか数多く残されていたりするものです。中には、自校史博物館を設置しているところもあります。最近の傾向として、それらをもとに少なからぬ大学(主に私大)では、「自校史」の授業が設定されており、学生の母校へのエンパシーを高めるとともに、学問的・批判的にそれらを探究することで歴史のコンピテンシーを育成する場となっています。

    

 このような試みは、大学以外の教育現場でも実践されるようになってきました。本校の場合ですと、昭和の戦争と深い関係のもとに生まれた山水高等女学校時代の記録が、戦争中の教育や生活を学ぶ際の貴重な史資料を提供してくれます。戦後まもなく、初代『ゴジラ』(1954年)のハイライトシーンでの劇中歌歌唱場面に於いて当時の桐朋生(全高校生)が撮影協力したエピソードについては、昨年度『桐朋教育』56号でも公式記録として紹介しました。高等学校地歴科の新設科目「歴史総合」に於いて、初代『ゴジラ』は1954年のビキニ事件やその後の核開発の現代史を学ぶ上での定番教材となっており、奇しくも本校がその時期の象徴的な場面に関わったことは、誇りの伝承と共に学ばれるべきことがらです。当時の本校生徒たちが、生徒会を中心に全国的な原水禁署名運動に積極的に関わった一次資料も発掘されており、生徒が市民として、社会変革とどう関わるかを考えさせる上での貴重な材料を提供してくれています(これについてはいずれ稿を改めて発表する予定です)。

     

 『桐朋教育』56号にまとめた初代『ゴジラ』と桐朋生による「平和への祈り」斉唱シーンについて調査してまとめた文章をPDFで公開します(写真利用については東宝の許諾を得ております。写真の複製はできません)。

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